PHC:プログレッシブ・ハイドローリック・クッション ”Magic Carpet Ride”(魔法の絨毯の乗り心地)を実現する 伝説の“ハイドロニューマチック”の現代的解釈

※本資料は2019年9月にシトロエンC5エアクロスSUVの日本市場導入にあわせて公開した技術資料に加筆修正したものです。

※4月12日追記:同日ワールドプレミアされた C5 Xにはシトロエン・アドバンスト・コンフォート・サスペンションの名称でPHCが採用されています。また、電子制御となるシトロエン・アドバンスト・コンフォート・アクティブ・サスペンションについては詳細が分かり次第お知らせいたします。

PHC(Progressive Hydraulic Cushions™)

今回、C5 AIRCROSS SUVに搭載されたPHC(Progressive Hydraulic Cushions™=プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)は、そのサスペンションテクノロジーにおける最新のイノベーションです。”Magic Carpet Ride”、魔法の絨毯のような乗り心地を実現しています。


5CV、トラクシオン・アヴァン、2CV、DS、SM、CX、BX、Xantia、C3、C4、C5、C6……戦前から現代にいたるまで、シトロエンは100年ものあいだコンフォートを実現すべくあらゆるイノベーティブな技術を用いてきました。伝説となったハイドロニューマチックはもちろんのこと、それ以前にもトラクシオン・アヴァンのモノコック構造+トーションバースプリングや2CVのマスダンパーなどがあったことからも自明なように、シトロエンのサスペンションシステムは、どれもが技術のための技術ではなく、あくまでシトロエンが求める快適性を実現するための手段でありました。ハイドロニューマチックも最高の快適性能やロードホールディングを実現するための当時として考えうる最良の手段が、それであったからといえるでしょう。

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※画像は動作イメージで実際の構造と一部異なります。

PHCは2017年10月に発表されたC4カクタスのフェイスリフト版(日本未発売)においてCitroën Advanced Comfort®プログラムの一環として開発され、初採用されました。日本市場においてはC5 AIRCROSS SUVが初出となります。

極めて快適な乗り心地、純機械式による高い信頼性、汎用性:ユーザーメリット

このPHCのメリットとして以下のようなことが挙げられます。

・劇的な乗り心地の向上
・純機械式システムによる高い信頼性
・車体側に油圧回路や電気回路などの取付けが不要なため、幅広い車種に展開可能


一般論として通常のダンパーの場合、圧側(縮側)で大きくストロークした場合、ゴムやウレタン製のバンプラバーがその衝撃の吸収を担いますが、ストローク時のエネルギーを減衰することができず反発力となってしまうために乗り心地や挙動の悪化を招くことがあります。PHCの場合、セカンダリーダンパーが減衰力を発揮するために、こうした現象が起こりにくくなります。また、実際の走行においては最終的なフルストローク時のみならず、ある程度のストローク時からセカンダリーダンパーの効果を使っています。

なお、C5 AIRCROSS SUVのPHCの場合、フロントは圧側伸側の双方にセカンダリーダンパーを、リアは圧側のみに備えています。

1994 Citroën ZX Rally Raidで開発された位置依存ダンパーがベース:基礎技術

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PHCのテクノロジーは1994年のパリ=ダカールラリーで優勝したシトロエンZXラリーレイドで投入されたものがベースとなっています。以来、この位置依存型ダンパーは、2000年代のWRCにおけるクサラ、C4、C3といったシトロエンレーシングにおけるラリー活動の各マシンに採用されて今に至ります(年度、車種ごとにダンパーサプライヤーは替わっています)。ラリーカーの悪路を速く安全に走るためのポテンシャルと蓄積されたノウハウを、シトロエンならではのコンフォート性能、つまりロードカーとしての卓越した乗り心地と快適性を実現するために活用した技術といえます。

20190903_CITROEN_PHC03のコピー

※PHCは2020年6月16日にワールドプレミアされた発表されたë-C4 - 100% ËLECTRICおよびC4にも搭載されます。また、同モデルの日本市場導入の時期、仕様は未定です。

PHCの場合:システム概念図(動作モデル)

※以下に続く概要図は、動作モデルを図示したものであり、必ずしも実際のPHCダンパーの構造そのものを表現したものではありません。一部簡略化などをしています。

 

 

薄いバンプラバー
通常のダンパーに比べ、バンプラバー(ウレタン)のボリュームが少なくなっています。ダンパー長さに対して実効ストロークのアップにもなります。

リバウンド側セカンダリーダンパー
切り欠きがあるCリングが取付けられたピストンとテーパー形状になったシリンダーを組み合わせています。ピストンが挿入されていくとCリングの切り欠き部分にオイルが流れて減衰力が発生します。また、テーパーボアによるプログレッシブ効果も付加され、最終的なハイドロリックバンプストップの役割も果たします。

コンプレッション側セカンダリーダンパー
スプリングで保持されたセカンダリーピストンがメインピストンのロッドに押されることでシリンダーに入り込みます。シリンダーにはポートが開けられており、この部分のオイルフローによって追加の減衰力が発生。ポートは奥に行くほど径が小さくなり、バンプストップとして必要なプログレッシブ効果を発揮し、最終的なハイドロリックバンプストップの役割も果たします。
図にあるスプリングはセカンダリーピストンを定位置に戻すためのもので、トップアウトスプリングのとしての機能はなく、全体のスプリングレートには影響を与えません。

 

通常のダンパーシステムの場合:システム概要

PHCの場合:システム概要

PHCの場合:コンプレッション/リバウンドのオイルフロー

リバウンド(伸側)セカンダリーダンパーは切り欠きのあるCリングがテーパーボアのシリンダーに入り込むことでプログレッシブな特性になるように設計されています。圧側セカンダリーダンパーのポートはストロークが進むに連れて穴の径が小さくなっていくようになっており、ここでもストロークに対してプログレッシブな特性になるように設計されています。コンプレッション(圧側)セカンダリーダンパーを 定位置に戻すためのリターンスプリング  ※リバウンド側も同様のリターンスプリングが存在しますが、本模式図では省略しています。  ※ともに全体のスプリングレートには寄与しません

PHCの場合:ライドハイト(車高)による圧側ダンピング特性の変化

PHCの位置依存特性:ライドハイト(車高)によるダンピング特性変化(リア)

通常ダンパー搭載車との比較:C5 AIRCROSS SUV vs PEUGEOT 3008(リア)

PHC/ C5 AIRCROSS SUVの場合:ピストン位置(ストローク量)によるダンピング特性変化(フロント)

PHCセカンダリーダンパー による減衰力の増加

PEUGEOT 3008の場合:ピストン位置(ストローク量)によるダンピング特性変化

コンプレッションダンピングは 低ピストンスピード域をのぞき C5 AIRCROSS SUVの方が PEUGEOT 3008よりやや強め (グラフはほぼ同一スケール)

PHC/ C5 AIRCROSS SUVの場合:ピストン位置(ストローク量)によるダンピング特性変化(リア)

PHCセカンダリーダンパー による減衰力の増加

※PHCは2020年6月16日に発表されたNEW ë-C4 - 100% ëlectric およびNEW C4、2021年4月12日に発表されたC5 Xも搭載されることが明らかになっています。日本での日本市場導入の時期、仕様は未定です。

 

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